2006年7月20日
オープンな活動で富を得る方法 - Cambrian Houseの提唱するCrowdSourcing(クラウドソーシング)
ディレクターの安藤です。
弊社では普段中野がアークウェブビジネスブログにポストしているようなニュースクリップを社内での情報共有のために流しているのですが、最近の記事の中で、非常に考えさせられるものがありました。
智場web: Web2.0は世界に何をもたらしたか【Webスペシャル版】 梅田望夫┼公文俊平
http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/text/2006/06/web20.html
この記事は、自分が日々好きな仕事をしながらも漠然と持っている不安な気持ちを言い当てていました。
アークウェブは、オープンソースのソフトウェアを活用した提案を多くのお客様に行い、また積極的にオープンソース運動に参加することが奨励されています(私は翻訳プロジェクトに参加することが多いです)が、そこで得られる充実感と同時に、将来に対する不安のようなものを感じることもあります。
自分は企画頭の人間ですので、いつか自分のアイディアが世に知られ、使ってもらえる状況が訪れることを夢見ていますが、同時に、ますますオープンになる世界の中で、どうやってアイディアで食べていくのだろうという疑問を持っています。
そのような中で、CrowdSourcing (クラウドソーシング)という面白い試みをしている会社がありました。その会社の名前は、Cambrian Houseといいます。
Crowd Sourcingとは群衆(Crowd)を利用し、報酬モデルを包含した自発的開発方法と呼ぶことができます。この考え方自体は特に目新しいものではないと思います。Cambrian Houseの中でも、ネットを通じて広くボランティアを募りR&Dコストを削減するサービスであるinnocentive.comなどが紹介されています。
Camblian Houseの提唱していることは非常にシンプルです。
「自分達が関わった貢献度によって、正当な見返りを受けようではないか、プランナーでもプログラマーでもテスターでもセールスでも」ということです。
その仕組みは、アイディアを広く募り、そのアイディアをみんなで精査して、良いと思われるものを作って、売り、得た利益を分配しよう、というものです。
あらゆる人がこの試みに参加することができます。参加にはユーザー登録が必要で、参加すると個人のプロフィールページが作成されます。
主にアイディアを思いつく役職、たとえばプランナー向けに、IDEA WARZというフローがあります。
ここで、自分が思いついた新しいサービスを公表します。アイディアをクリックすると詳細が見られます。自分のアイディアは、WARZの名が示すとおり、他のアイディアと投票により、勝敗数を示すBattleScoreと、評価式に従ったTotalRankがつけられていきます。このアイディアに対して、他のユーザーからコメントがつくこともあります。この仕組みでは、ユーザーがアイディアを吟味し、評価することも重要な行為として認識されています。
そしてこのIDEA WARZを勝ち残ったアイディアは、製作段階へと移り、次のSUBMIT CODEへ移行します。
ここでは制作者としてメンバー登録をした人間が、自分の参加したいプロジェクトに志願し、他の志願者と協力しながら、アイディアを形にしていきます。オープンソースのプロジェクト開発と同じく、優れたコードが生き残ります。
次のSUBMIT CREATIVEで、優れたプログラムを優れたサービスにするための追加開発がクリエイティブ畑の人によって行われます。
優れたシステムは優れたプログラムだけで完結するわけではありません。優れたクリエイティブも必要になります。デザイナーやコピーライター、エディター、イラストレーター、マークアップエンジニアなどが活躍できる機会はここにあります。
以上のフローを経て作られたプログラムには、1500点のポイントが与えられ、各参加者の貢献度合いによって、ポイントが割り振られます。採用されたアイディア自体には150ポイントが与えられ、残りの割り振りは決まっていません。このあたり知的財産を重んじる西洋の風潮が感じられます。
作られたサービスは商業化を目指して販売活動が行われます。この販売活動は現在Cambrian Houseが行うようです。その販売活動によって得られた利益は、ポイントに応じてプロジェクト参加者に還元されていきます。ここもメンバーが貢献できるようになれば面白いですね。
当然多くの駄作プロジェクトが生まれ、消えていくことでしょう。しかしこれは社名にもついている、数多くの生命が生まれ、淘汰されていったカンブリア紀のカンブリア大爆発と同じです。淘汰の結果により、より良いもの、より強いものが生き残ればいいのです。その積み重ねにより、自分達の世界はより豊かになっていきます。小さな生き物が大きな生き物を滅ぼす、そのようなエキサイティングな変化だって起こりえます。
誰もが自分の興味あるプロジェクトに、自分の持っている能力で参加することができ、その貢献度合いに応じた見返りを期待できる。Cambrian Houseがわかりやすく作り上げたこのCrowdSourcingという開発手法は、今後の主流になっていくのではないでしょうか。
例えば会社で企画を通したいけれど、会社にそれを実行する余裕がないという人や、仕事がつまらなすぎて力の有り余っている人(さて、Web業界に何人いるでしょうか・笑)、自分は全ては出来ないけれど、富を得たいと考えている人、単に面白いことに参加してみたい人、このような方々は、このCambrian Houseに参加してみてはいかがでしょうか。
単に社会的貢献だけで満足するのではなく、きちんと報酬の得られる仕組み。オープンな活動は、ボランティア的満足感を得るだけのものではありません。Cambrian Houseの提示していることは単純で、合理的で、未来を作っていける方法だと思います。
さて、このアイディアを面白いと思うか、これを利用して抜け駆け、囲い込みしたいと思うかで、自分が旧世代の人間か、はたまたシフトした人間なのかがわかりそうです。
カテゴリー: オープンソース
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