2005年10月12日
Slow Tail(スローテール):初訪問から購入までのタイムラグ実感
ディレクターの遠藤です。
優柔不断な私は、200円のデザートを買うかどうかで20分くらい迷うことがあります。「ダイエット」、「期間限定」、「節約」、「自分へのご褒美」と頭の中で会議した末、「とりあえず他の売り場をまわったあと、また来よう。」といって、いったんその場を離れたりします。
一度商品を見にきてもその場ですぐ購入せず、後日、購入しようという意志をかためて再びショップを訪れるというのは、オンラインショッピングでもよくあるパターンです。他サイトと比べたり、実店舗で商品に触れてみたりするので、再びそのサイトに戻ってくるのは数日後、あるいは数週間後だったりすることもあります。
そこで質問。
あなたのサイトでは「再訪者のためのユーザビリティ」を、どれくらい先まで考慮していますか?
Slow Tail:訪問から購入までのタイムラグ (Jakob Nielsen博士のAlertbox)
http://www.usability.gr.jp/alertbox/20050906.html
上記の記事では、Alan Rimm-Kaufman 博士による Google と Yahoo! の広告からの 100万クリックの追跡結果が紹介されています。最初にサイトを訪れてから注文するまで「どれだけの人が、どれだけの時間をかけているか」がわかる、実に興味深いデータで、Jakob Nielsen (ヤコブ・ニールセン)博士による分析と実装についての指摘も的確かつ有用です。概要をご紹介しましょう。
まず、コンバージョン(顧客転換)の「半分は最初の 28 分以内に行われた」ということ。つまり、購入した人のうち半数は、ほとんど迷うこともなく、すんなり購入手続きを行っているということですね。すでに心を決めてきた人たちでしょうか。衝動買いも入っているかもしれません。さらに、コンバージョンの 75 %は、24時間以内に行われたとあります。
ところがその後、コンバージョン率の上昇は急激に勢いを失います。最初のクリックから 3 日を過ぎるとほぼ横ばいとなります。なんと顧客転換の約 5 分の 1 は、その横ばいに入ってからポツポツ注文されたもので、最終的に「残りの 5 %の注文は最初のクリックから 4 週間以上経ってから行われている」とのこと。上記のサイトでは、その実験データのグラフの形状から、注文までの時間が長くかかっている部分をさして「Slow Tail (スローテール)」と呼んでいます(最近注目されている「ロングーテール(Long Tail)」理論にかけたものでしょうか)。
また、その「Slow Tail (スローテール)」となる訪問客をきちんとフォローし、確実にコンバージョンを起こさせるために気をつけなければならない、いくつかのポイントについて指摘しています。
○サイトに訪問を受けた1日目のデータだけで判断しない
平均的なサイトの場合、ユーザーテストなどで最初の訪問だけを検証しても、結果の 75 %しかみることができないそうです。それが高額な商品であるほど、顧客転換は遅くなるというデータも紹介されています。ユーザー情報を追跡調査するために Cookie を使う場合は、期限切れまで最低でも 90 日間設けること、とされています。
それなりの金額を支払うのですから、付属品やサービスの範囲を充分比較検討しておきたいですよね。私は冷蔵庫をオンラインで購入しましたが、店舗に実物を見に行ったり、家族に相談したり、インターネットでクチコミ情報を探したりで、注文までに2週間ほどかかりました。冷蔵庫がないと不便なので急いで選んだ結果ですが、もし買い換えであれば、急がないので最低でも1ヶ月は迷っていたと思います。もっと高額な品物や、比較検討する情報が多い場合は、さらに時間が必要ですね。
○最初の「訪問行動」ではなく「再訪問行動」をサポートする
「はじめてサイトを訪れた方」のためにユーザビリティを考えるのも大切ですが、それだけでは不十分、ということです。2回、3回と来てくれる訪問者のために、たとえば何度も学習を強いることのないよう「同じ場所に同じ物を配置しておく」といったことも重要だと指摘しています。
ようやく決心がついて、買う気満々でショップを見にいくと、欲しかった商品が消えていることが多々あります。なんせ優柔不断ですから「悩んでいる間に売り切れてしまったんだ! 」とショックを受けることも多いのですが、よくみると配置が変わっていて、見つけられていないだけ、ということもあるんです。気が付かなければ買えなかった、となると、私にとってもショップの運営者にとっても残念な結果となっていたでしょう。
○まだ迷っている段階のユーザーに対して「早まった要求をしない」
仕様書やデモなど、購入前に知りたい情報には、スムーズにアクセスできるようにしておきましょう。購入を迷っている人が尻込みしてしまうので、無闇に登録を義務づけるのは避けたほうがよいそうです。
私がいくつかのサイトで商品を比較しているとき、まず面倒な手続きが必要なところは除外して考えます。特に最近はフィッシング詐欺など流行していますから、まだこちらが何も受け取っていない段階で個人情報を収集するサイトは警戒してしまいますね。
○買い物かごや、ウィッシュリストの商品に時間制限をかけて消さない
訪問者が、せっかく自分好みの商品や、興味のある商品を選び出したのですから、「彼等がかき集めた情報を捨ててしまってはいけない」のです。
私が時々利用するインターネット書店の Amazon.co.jp では、購入を検討中の商品を保存しておけるショッピングカートはもちろん、以前チラっと情報を見てみただけの商品まで履歴が残っているので、後から思い出して「やっぱりあの商品が気になる、どれだっけ?」という時に便利です。「再訪問行動」を重視しての仕様だと思います。
○検索エンジンの広告や、キャンペーンのための特設ページを3ヶ月間は残しておく
なんらかの広告、パンフレットやメモを控えておき、日が経ってからアクセスしてくるユーザもいる、ということを念頭に置いておく必要があります。
私はミニチュアが好きで、ある人気ミニチュア職人さんのメールマガジンを読んでいます。先日ふと、過去のメールマガジンに記載されていた作品情報が目にとまってクリックしてみたら、だいぶ時間が経っていたため売り切れた後でした。ただ、ちゃんと売り切れた過去の作品情報、写真などが残してあり、次の新作情報を見ることもでき、見事に購買意欲をそそられてしまいました。こんな時もし、過去の情報が「Not Found」などアクセスできない状態だったら、その後しばらくそのサイトを見に行くこともなかったでしょう。
「 Slow Tail (スローテール)」は、一生懸命時間をかけてじっくり選ぶ、典型的な訪問者の姿とも考えられます(私のように!)。そういうユーザと根気よくつきあえば、再訪率が上がり、リピート顧客の増加にもつながるかもしれません。ぜひ一度、再訪者の視点からWebサイトを見直してみてください。
カテゴリー: Webユーザビリティ
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